東京の島々を結ぶアート航路開発委員会
Planning and Development Committee for Contemporary Artways Linking Tokyo Islands
油井 瑞樹 MIZUKI YUI
分節と浸透 − 雨音 −
壁に掛けた白いキャンバスと対面したとき、すでにぼんやりとイメージを投影している自分がいました。ふと我に帰るとそこにあるのはただの白、麻布、木材。
その白いキャンバスの表面は、画家の行為を待っている状態ですが、その状態がすでに、脈々と紡がれてきた絵画の表面と繋がっている、表現という大きな円弧の一端を担っているのではないだろうか。その表面は、まるでずっと昔からそこにあったかのような感覚を覚えました。このことは個人的な体験とも繋がって、急な大雨が降り出したとき、室内から森を見ているときを思い出しました。みるみるうちに艶を帯びていく樹木、打ち付ける雨音に意識は包まれて、太古の昔より変わらぬ様子だと感じられました。いま私が立っている場所が過去と確実に繋がっているという意識。また現在の置かれている状況に引き戻される意識の変化の繰り返し。
私は主にキャンバスに使用されている木材・麻布・下地剤という支持体と呼ばれるものに着目し扱っています。それらに垂らす・塗る・掻くという次元の異なった行為を施し、ものを見ながらにしてイメージを喚起する、視覚が行き来する、分節と浸透が繰り返されるところを表現したいと願っています。
1978年 福島県福島市生まれ
2005年 多摩美術大学大学院油画専攻卒業
個展
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