油井 瑞樹

油井 瑞樹 MIZUKI YUI

分節と浸透 − 雨音 −
 壁に掛けた白いキャンバスと対面したとき、すでにぼんやりとイメージを投影している自分がいました。ふと我に帰るとそこにあるのはただの白、麻布、木材。
 その白いキャンバスの表面は、画家の行為を待っている状態ですが、その状態がすでに、脈々と紡がれてきた絵画の表面と繋がっている、表現という大きな円弧の一端を担っているのではないだろうか。その表面は、まるでずっと昔からそこにあったかのような感覚を覚えました。このことは個人的な体験とも繋がって、急な大雨が降り出したとき、室内から森を見ているときを思い出しました。みるみるうちに艶を帯びていく樹木、打ち付ける雨音に意識は包まれて、太古の昔より変わらぬ様子だと感じられました。いま私が立っている場所が過去と確実に繋がっているという意識。また現在の置かれている状況に引き戻される意識の変化の繰り返し。
 私は主にキャンバスに使用されている木材・麻布・下地剤という支持体と呼ばれるものに着目し扱っています。それらに垂らす・塗る・掻くという次元の異なった行為を施し、ものを見ながらにしてイメージを喚起する、視覚が行き来する、分節と浸透が繰り返されるところを表現したいと願っています。

1978年 福島県福島市生まれ
2005年 多摩美術大学大学院油画専攻卒業


個展

2016
トキ・アートスペース企画シリーズ “Real/Material” vol.1/東京、渋谷
2013
トキ・アートスペース企画シリーズ “Critical Painting” vol.6/東京、渋谷
珈琲グルメにて作品展示/福島県福島市
2012
トキ・アートスペース/東京、渋谷
2011
トキ・アートスペース/東京、渋谷
2010
アートトレイスギャラリー/東京、両国
2008
ギャラリー21+葉/東京、銀座
2007
ギャラリー21+葉/東京、銀座
2006
ギャラリー21+葉/東京、銀座
2004
ギャラリー現/東京、銀座

グループ展

2016
「福島からの手紙 part2」アートスペース月光醤油/福島市
「Emmetropia 震災後を見つめる 岡部昌生 ZIRCON + Artists Charity 2016」雲雀舎/新潟県長岡市
2014
「福島青年美術の展望展」福島県二本松市
2011
「アートのある建物」EN PROJECT 鈴木工務店・可喜庵/東京、町田市
2010
「ART TRACE GALLERY GROUP EXHIBITION」アートトレイスギャラリー/東京、両国
「暗月 — a dark moon 2」展 トキ・アートスペース/東京、渋谷
2009
「A trace of 10 years in Gallery Den」展 現代HEIGHTS gallery DEN/東京、下北沢
「極小から無限大へ 第2回 マーケットトレイス」展 アートトレイスギャラリー/東京、両国
2008
「暗月 — a dark moon」展(烏山秀直、諏訪未知、油井瑞樹による3人展)
現代HEIGHTS gallery DEN/東京、下北沢
「ギャラリー21+葉の9350日」展 ギャラリー21+葉/東京、銀座

 

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